ふたこぶくじら

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<<   作成日時 : 2012/02/10 22:19   >>

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現実逃避のために書き殴ったSS。立春も過ぎたからだんだん頭が春に…

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暗い自室でコタツに入ってネットサーフィンをしていると、突如ノートパソコンが煙を噴いた。まじか、何で壊れた、と3秒ほど固まっていると、パァッと煙が消えた。

「お呼びかい!」

はしゃいだ少女の声が聞こえた。何の動画を再生してたっけ?いや、なにも再生していない。マウスとキーボードに置いたままの両手の肘に、何か固いものが触れているのに気づく。横を見やると、右に黒、左に白の、棒のようなものが垂直に立っていた。

「ん!?どこだっ!?」

また少女の声がする。頭の上から。見上げてみる。ちょうど頭の真上で、左右の棒は繋がっていた。なんだか人の足と股のようにも見える。いや、人だ。女の子だ。なんだなんだ。呆気にとられてそのまま見上げていたら、下を向いた彼女と目が合った。

「誰だオマエ!」

お前こそ誰だ。

「ふんっ!」

不意に目の前が真っ暗になる。直後、鼻から始まって額と唇を衝撃が襲う。踏まれたらしい。しかし重さはさほど感じなかった。鼻を抑えながら振り向くと、俺を踏み台にして跳躍した少女は身構えながら、訝しげな顔で俺を睨んでいた。

「ソーセキじゃないのか」

だれだ。夏目さんのことだろうか。とりあえず首を横に軽く振ってみる。

「そっか…もう過ぎちゃったのか」

少女は部屋を見渡して、一瞬寂しそうな顔をした。「猫…」と呟いたような気がした。それから一度目を閉じ、なにやら納得した様子で、構えの姿勢を解くと俺をもう一度見据えて、

「さて、何かしたいことはある?」

と聞いてきた。現れたときの、嬉しさが混じったような声ではなく、ややぶっきらぼうな声色だ。

「何かと言われても…」

この子の素性を知りたいところだが、踏まれた鼻はもう痛くはないものの、くしゃみが出そうなもどかしい感じがして喋れない。ひとしきりお互い無言で睨みあう形になった。

しかし突飛な身なりをした少女だ。コスプレっぽい風変わりな衣裳。なんだか左右でちぐはぐだ。たとえば白と黒のニーソックス。ズボンは右がショートパンツで左にフリル。どうなんだそのセンス。模様のついた腰帯のようなもの。胸は…片側が柔らかそうな素材の布で覆われ、片側は…んんっ?裸にタトゥー…?ごくり……な訳ないか。なんか薄い胸当てみたいなものがついてるな。前髪は額の上を弧を描くように整えられ、後ろ髪はでっかくささくれたリボンでポニーテールにまとめている。おでこには何かの紋様。耳がエルフみたいに長い。あと、つぎはぎのマントをつけている。年齢は10〜14歳といったところだろうか。俺?俺はまぁ…どこにでもいそうな、ゆるい部屋着でくつろいでる大学生だよ、うん。聞きたくねえだろ。勝手に想像してろ。

「むっ、オマエ、鏡写しの術を使うのか」

少女の視線は俺の肩越しに、コタツの上のノートパソコンのディスプレイへ向いてるようだ。

「…鏡じゃないんだけど。もしかして見たこと無い?」

少し治まってきた鼻のむずむずを我慢して、聞いてみる。

「むっ…。…無くはない」

下唇をほんのわずか上向かせてそう答える。嘘っぽい。別に強がって知ったかぶらなくてもいいだろうに。

「それで魔渦印を書いたのか」

まかいん?何のことだ。書くと言ったって、ペンタブレットは持っているが、今日は別に使っていないし、ペイントソフトも立ち上げていないぞ。

「魔法のための渦巻き」

「うず?いや…何も書いてないけど」

「その絵はなに…うわっ」

少女は右手の人差指でディスプレイを指す。その人差指の腹に、赤い矢印が描かれているのがちらっと見えた。それはそれとして、俺は振り向いてディスプレイを見る。そこには肌色成分の多いアニメキャラの画像がブラウザに表示されていた。あぁ…忘れてた。そういう画像を探してたんだったっけ…。いや、探すつもりじゃなかったんだけど、ネットをしているとついそういう方向に行ってしまうのはよくあることだ。うん。「あ、これは…」と振り向き直すと、少女の人差指は曲げられ、顔がやや引きつっていた。

「なに!?やらしいものっぽい!?」

…そうだね。同意せざるを得ない。少女は俺と目が合うと、一歩後ずさり、両腕で自分を抱え込むような体勢を取った。なんてことだ、身の危険を感じられてしまったようだ。なんだろう、ショックだ。ちょっと泣きたい。

「違う…違うんだよ、これは…」

何も違わないのだが、つぶやくようにそう言いながら、俺はマウスを操ってブラウザのタブを閉じにかかった。

「あっ、ほら、そのアロー!それ使ったんでしょ?」

再び少女は画面を指さす。アロー?矢印?あ、もしかしてこのマウスカーソルのことか。カーソルをくるくると動かしてみる。

「なんだ、なんの魔渦印を書こうとしてるんだ…あ、絵を消すのか」

タブを閉じる。ふむふむ。なんとなくわかったぞ。つまりこのカーソルの動きが魔方陣みたいなものを描いているように見えたんだな。そしてようやく、突然の事にびっくりしていた俺の脳味噌も落ち着いてきて、冷静で正常な思考の回転を始めた。

「ふふふ、どうやら僕は君を召喚してしまったようだな…」

雰囲気を出したつもりで、少しばかり怪しげな口調でそう呟いてみる。来た。来たな。これ来たんじゃないの。ついに俺もファンタジーの世界の住人になれた、ってやつだ。異世界から魔法少女がじゃじゃじゃじゃーん。心の中の笑いが止まらない。やめられない止まらない、やめたくない。

ついでに、頭の中の一人称と、口に出す一人称は違う。文句あるか。二人称だって三人称だって違うんだ。てめえはあなた、あの野郎はあの方。きっとみんなそうだ。よね。

「うん」

至極簡単な返事だった。ほとんど冷めてると言ってもいい。「どうして召喚の仕方を知ってるんだ、何者だお前は!?まさか…」みたいな展開を希望していたのだけど。そう実際に言ってみたところ、

「だいたいの場合、偶然に書いちゃったものだから。最初に呼ばれるときいつもそうだから」

とのこと。なんだよ。なんか慣れてんな。

「みんなそうだもん」

そっか。いや、みんなってなんだ。お前の仲間はいっぱいいるのか。

「1万人くらいいる」

ほほう…予想よりだいぶ多いな。10人くらいかと思った。

「なんていうか、呼ぶ人は大抵、変な空想に耽ってる人だね」

うわぁ。恥ずかしくなってきてしまったじゃないか。先ほどの芝居がかった自分を思い出して、背筋がぞわっとする。鼻まで再びむずむずし出す。

「あと、キノコ食べたでしょ」

キノコ?覚えが……ある。昨夜、俺の頭から生えてきたキノコを喰った。あれか。…あれか、じゃないやね。普通食わないよね。そもそも生えてこないよね。いや違うんだ、決して俺は頭がおかしくなったわけじゃないし、何年も頭を洗わなかったとかでもない。なんかね、生えてきたんすわ。こう、ひょこっと。不意に。風呂上りにビール飲んで煙草吸ってたら、頭のてっぺんがむずがゆくなってきたから触ったら、キノコ生えてた。何気なくむしり取った。紫色してた。わけわかんなくなってライターで炙って噛み砕いてビールで流し込んだ。しょうがないの。あまりにもびっくりすると人は時々不可解な行動に出るの。すっげえこれ幻覚っぽいけどあれマジックなんとかじゃないだろうな。

「あんまり空想ばっかしてると、キノコが生えるの」

まじでー。

「魔力を含んだ胞子が普通に空気中に飛んでるんだけど、生える人と生えない人がいる」

なるほど、それを食ったから魔法が使えるようになった、と。25歳過ぎて女人と交わらないと男性は魔法使いになるんだわさ、ってのとは関係ないようだ。俺まだ21だし。

「なにそれ」

「いや、こっちの世界の迷信。気にしないで」

「そう。で…どうするの?」

「どうするって?」

「せっかく呼ばれたんだから…チェフカにできることならなんでもしてあげるよ」

あらやだ、グッとくる台詞だ。嬉しい事言ってくれるじゃないの。待て、がっつくな。息を荒げるな。きっとそういう意味ではない。召喚された魔法使いだか悪魔だかそういったものがなにか願いを叶えてくれるってやつだな。お色気系はおそらくNGだ。しかし今さりげなく名前っぽい名詞を言ったな。チェフカちゃんって言うのか。ちゃん付けはきもいか。やめとこう。いやそれはどうでもいい、何をお願いしたものか…

「なんか薄汚い部屋だね。掃除してあげる」

迷っていたら、少女は勝手にアクションを起こした。

「え、ああ、お願い」

しまった、向こうで決められるとは予想せず、不意の事につい了承してしまったが、もし願いを一つだけ叶えるとかだったら、こんなもったいないことに…うーん、でも実際、いちばん今やってほしい問題でもあるしな…。

「……」

チェフカは無言のまま、右手を何かを指さすような形に握ると、その赤い矢印のついた人差指を、空中で円を描くようにくるくると動かし始めた。

「おおっ?」

思わず声が出た。チェフカの指先の軌跡が、白い線を描いてそのまま、何もない空間に固定された。こういうドラえもんのひみつ道具あったなあ。空に絵描けるやつ。なんとかクレヨン。ただ、あれとは違って、白い線はかすかにゆらゆらと揺らいでいる。白い炎、と言ったらしっくりくるかもしれない。でも、液体のようでもあり。その不思議な線で円が描かれてゆく。円と言うより渦巻きか。きっとこれが魔渦印ってやつだな。

彼女の指先は何度か複雑な模様を描きながら、ぐるぐるとその中心に向かって走ってゆく。やがて、ぽん、と(そういう音がしたわけではないが)、まるで水面に付けていた指を離したときのように、彼女の指先は渦から離れた。

と同時に、その渦は発光し始め、またたく間に部屋全体が蛍光灯を点けたみたいに明るくなった。そしてポルターガイストが始まった。飛ぶの。もうコタツとパソコンを残して、部屋中のものがみんな宙を舞って、すっごく大雑把に大きさや形でグループ分けされて、壁際にどーん。強引にまとめられた。ぎゅうぎゅう詰めだ。うん、まあ安定した形で積まれているといえばその通りだ。使い勝手など二の次とばかりだ。段ボールからはみ出すほどに入れられていた大量の漫画は、床から天井までぎっちりと積み上げられた。さながら一本の柱のように。そしてそれが何本も。これもう取り出せないな。でも耐震強度は上がったかもな。

そして騒ぎが鎮まると、床にはバレーボールくらいの大きさの、なにかもこもことした灰色の玉が形成されていた。あ、埃だわこれ。まとめられてる。げぇ、こんなにあったのか。いやなんとなく知ってたけど。

「汚すぎでしょ」

はい、ごもっともです。でもなぁ。

「君の片づけ方もどうかと思う」

そう指摘すると、チェフカは多少むっとした顔で言った。

「でも前よりずっといいでしょ。じゃあ報酬もらうからね」

はい?ええっ、報酬を要求するの?先に言ってくれよ。まさか、

「ちょっと魂もらうからね。大丈夫、痛くないから」

ちょっとじゃねえよ。それ寿命とか健康とかに影響あるんじゃないのか。

「ちょっと、ちょっとだから」

チェフカは少しずつ近づいてくる。指先でなにやら別の渦を描きながら。その目には好奇の色が滲んでいたように思う。

「待て、ま…」

その時、空中に舞っていた、集めきれなかった小さな埃が俺の鼻先をかすめた。その感触が、踏まれたときからのむずむずと相まって、一気にくしゃみを誘発した。

「っくし!」

「ひゃあっ!?」

俺のくしゃみに合わせて、ぱちん、と音を立てるかのように、チェフカが途中まで描いた渦が弾けて消えた。

「あ…あんたも!?」

チェフカは驚いた様子で立ち止まり、俺を見る。そうか、なるほどわかったぞ。

「ふ…そうさ、僕は魔渦印を消すことが出来るのさ…」

かっこつけて言ってみた。鼻をすすりながらだったが。

「ああ…まただめか…」

チェフカは落胆した様子を隠さず、ため息までついた。

「じゃあ…いいや」

お、諦めたか。

「またしばらく修行しなきゃ。そのうちちゃんと魂もらうからね…。うう、寒い。おやすみ」

なんだおやすみって。おい、それは俺の布団だ。

「朝ごはんは目玉焼きとウィンナーがいい」

チェフカはそのままの格好で、もぞもぞ布団に入りながらそう俺に告げる。

「ここで暮らすのか」

「そうだよ。オマエが呼んだんだからそういうものでしょ」

うん、いいけどね。少女と同棲とか願っても無いことだしね。こういう展開は漫画やアニメで慣れてるしね。でも、

「オマエって呼び方はなんだかなあ」

一応反抗しておく。年下の少女に罵られる属性はさほど持ち合わせていない。あまりなめられるのも気に食わない。俺の部屋だし!

「…なんて名前?」

横向きに寝て、こちらに顔を向けずに聞いてきた。

「…さねゆき。乙(きのと)実雪」

「…きの…さねゆ…?言いにくい。…坊っちゃんだ、オマエの事は坊っちゃんと呼んでやる」

えーなにそれ。やだ。いっそう馬鹿にされてる気がする。

「うるさい。今日はびっくりして疲れたから寝るから。おやすみ」

寝た。びっくりした度合いはこっちの方が大きいと思うんだけど。すー、すー、じゃねえよ。なんだそのかわいい寝息は。とかいう感想が出てくるあたり、俺もまだだいぶ余裕あるな。うん、冷静だ。まかしとけ。何をだ。何でもいいや、もう。

俺はノートパソコンに向き直ると、テキストファイルを開いて、数年来の習慣になっている日記をつけた。

『2月8日 晴 休校日 ネット』

簡潔明快な日記だ。簡潔過ぎて、見返しても何のことだったか自分でも思い出せない時があるが。意味不明な単語の羅列とか。たとえば昨日の、『キノコ 頭 食う』。これは忘れないだろうけど。

そして、おそらく一生に一度くらいしか書くことはないだろう言葉を今日の日記に付け足す。

『悪魔(?) 来る』

いや、一度もありえないよね。自分ツッコミを入れながら、パソコンをシャットダウン。コタツに潜り込む。さすがに布団には入れないな。コタツ以外に暖房器具の無いアパートの一室は寒い。…風邪ひかないといいけど。毛布だけでも引っ張って取り戻そうとしたが、ギュッと抱え込まれていて無理だった。っくし。


−−−


つづかない。

ああ、歯が痛い。月曜までなんとか。読み直して既に恥ずかしい現在進行の黒歴史による黒魔術でもって、己に暗示をかける。オオ、歯、イタクナイ。オレ、ダイジョウブ…

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ついにラノベ作家になるんですか
すみこぅ
2012/02/11 17:17
あら、お懐かしいオーストラリア帰りの人がいらしたわ( ・ω・)
そうですね、もう脳内は自分の自分による自分のための物語創作兵器です。がしゃーん、がしゃーん。げんじつがあらわれた!撤退!撤退…!どこまで逃げられるかな…
Flerov
2012/02/11 20:26

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